クレーム問題について(第1回)
ークレームの意味と注意点ー

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1 はじめに

今回は、3回にわたり、クレーム問題について述べさせていただきます。

クレームに関する法則として、ジョングッドマンが提唱した「グッドマンの法則」と呼ばれる法則があります。法則の内容は、以下のとおりです。

第1法則:「不満を持った顧客のうち、苦情を申し立て、その解決に満足した顧客の当該商品サービスの再入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客のそれに比べて高い」(不満を持った顧客の苦情を迅速に解決することができれば、82%の高確率でリピーターになってもらえるという結果が出ているそうです。)

第2法則:「苦情処理に不満を抱いた顧客の非好意的な口コミは、満足した顧客の好意的な口コミに比較して、2倍も強く影響を与える」

第3法則:「企業の行う消費者教育によって、その企業に対する消費者の信頼度が高まり好意的な口コミの波及効果が期待されるばかりか、商品購入意図が高まり、かつ市場拡大に貢献する」

グッドマンの法則が最初に発表されたのは1980年頃だそうですが、その後もデータは修正され続け、現在のCS(顧客満足)の基礎となり、「苦情は宝物」という言葉を生み出したとされています。

グッドマンの法則にもあるとおり、クレーム対応を適切に行うことで企業の利益になり得る一方で、クレーム対応を誤ってしまうと企業の利益が損なわれてしまいますので、本稿がクレーム対策に多少なりともお役に立てば幸いです。

2 クレームとは

(1)そもそも、クレームとは何か?この点、人によって微妙なニュアンスの違いがありますが、本稿では、「クレームとは、顧客の負の感情が加わった要求・問い合わせ・相談・苦情・文句」と定義いたします。つまり、程度の差こそあれ、感情的な要素があるものがクレームとして、話を進めてまいります。

(2)クレームを大きく分類すると、正当なクレームと不当なクレームとに大別できます。

ア 正当なクレームとは、感情的になっているとはいえ、顧客の言い分に根拠があり、かつ、言い分も社会通念上相当なものをいい、他方、不当なクレームとは、顧客の言い分にそもそも根拠がないか、あるいは、根拠があるとしても言い分が不相当なものといえます。

イ 正当なクレームは、顧客が大なり小なり感情的になっているとはいえ、これに適切に応じることで、製品や技術の向上を図ったり、顧客満足度を向上させる契機になりますので、企業としては、クレームを真摯に受け止めて、今後の役に立てるべきです。

万が一、正当なクレームを真摯に受け止めず、対応を誤ってしまうと、SNSで拡散されたり、場合によっては訴訟に発展するなど、企業のレピュテーションが毀損するおそれがあるので、注意が必要です。

ウ 他方で、不当なクレームは、クレームに根拠がなかったり、根拠があるとしても不相当な要求なのですから、要求を受け入れてしまうことは不適切です。

この点、企業がクレーマーの不当な要求に応じてしまった理由として多く挙がるのが、「当社サイドにミスがあったので仕方がなかった。」というものです。

しかし、企業側にミスがあれば顧客の要求が不当であっても受け入れなければならないのか?と言えば、決してそのようなことはありません。

企業が損害賠償義務を負うか否かは、ミスによってどのような損害が顧客に発生したのか、その損害は企業のミスとどこまで相当因果関係のあるものなのか、という点がポイントになります。

もちろん、ミスがあったのであれば、社会通念に照らして、その点についての謝罪はきちんとするべきです。

しかし、ミスがあっても、ミスと相当因果関係がある損害がなければ、賠償をする義務は法的にはありません。

また、損害賠償の方法は、「金銭賠償の原則」により、原則として、金銭に見積もって賠償することになります。

したがって、金銭を支払う方法以外の賠償方法、例えば、「土下座をしてお詫び」をする義務はなく、相手からこのようなことを強要されても応じる必要はもちろんありません。

エ 正当なクレームなのか不当なクレームなのかは、判別が容易ではない場合も多々ありますので、後記のとおり、初期対応で顧客の言い分をよく聴取し、まずは虚心坦懐に事実確認をきちんと行うことが重要です。

例えば、顧客が感情的に大声で怒鳴っているからといって、そのことのみをもって不当クレームと即断してしまうと、その後の対応を誤ってしまいます。

初期対応においては、不当クレームと安易に即断しないように注意しながら、顧客のクレーム内容を真摯にじっくり聞くことが肝要です。質問や弁解などの企業側の言い分がある場合は、顧客の感情が落ち着いた頃を見計らってから行うことが適切と思われます。

3 クレーム対応する際の種々の留意点

(1)クレーム対応に際しての心構えとしては、「顧客平等・公平取扱いの原則」の貫徹が重要です。すなわち、通常の顧客が要求してきた場合ならNOと拒絶する要求ならば、目の前にしているクレーマーがどんなに面倒な相手でも、通常の顧客に対する対応と同様に、NOと言って拒絶しなければいけないということです。

企業側のクレーム対応者がこの原則を貫徹するためには、企業が、事前に、クレーム内容のどこまでなら応じて、どこまでからは応じない、という軸をしっかり定めて周知しておく必要があります。

(2)クレームを受けた担当者あるいは部署が陥りやすい心境は、クレームがなされたというトラブル自体や、クレームで指摘された企業や製品・サービスについての不具合や不都合を、自分たちだけで内々に処理し、大事に至らぬよう早く処理してしまいたい、というものです。

すなわち、上司、本社、監督官庁、得意先などの関係先に広く知られると面倒なことになると考え、自分たちだけで内々に処理しようとの意識が働きやすいのです。

しかし、担当者が内々にその場しのぎの処理で済ませたがために、後々、大問題に発展するおそれもありますので、そのようなことにならないよう、企業としては、担当者がクレームを隠ぺいすることがないように、風通しのよい体制を整備する必要があります。

風通しのよい体制にするには、組織の縦・横で情報がスムーズに行き交う必要があると思いますが、この縦の連携に関して、部下からきちんと報告連絡相談がなされない、という上長の不満を耳にすることがあります。

たしかに、報告連絡相談が適時適切になされないと、水面下で事態が深刻化していき、発覚したときには大問題になっているケースが多々ありますので、適時適切な報告連絡相談をすることは部下としての重大な責務であり、これを懈怠するようなことがあってはなりません。

しかし、報告連絡相談が適時適切に行われない原因は、必ずしも部下だけの責任ではなく、上長も自らのあり方を省みるべきケースがあるように感じます。

といいますのも、上長のあり方として、部下が報告連絡相談してもフォローせず、叱咤するのみでは、部下としても萎縮してしまい、報告連絡相談をしようというインセンティブが働きませんので、適時適切な報告連絡相談がなされないのもやむを得ないように思われるのです。

そういった意味で、適時適切な報告連絡相談を実現するためには、上長が部下に心理的安全性を与えることが、前提として必要だと思います。

(3)多くの企業は、「たらい回しにされた!」という批判を避けたり、対応が区々になることを避けるために、クレームの担当者を変更しないことを原則としているかと思います。

しかし、万一、担当者が顧客から罵倒されたり、ストーカー的な被害や人権侵害に遭っても担当者不変更の原則を維持すると、一人の担当者だけがストレスを溜め、最悪の場合、担当者の労災問題にまで発展しかねません。

相手がまともでない場合は、組織として対応するべきで、1人の担当者に無理させることなく、気楽にチェンジするべきと考えます。

次回は、クレームに対する具体的対応方法等について触れさせていただきます。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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