SNSを巡るトラブル対応について

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1 はじめに

今回は、SNS(Twitter等)をめぐるトラブルについて述べさせていただきます。

最近、飲食店やコンビニなどで、アルバイトが不適切な動画を撮影し、SNSに投稿した結果ネットが炎上し、それによって店が多大な被害を受ける事件(いわゆる「バイトテロ」)が度々報道されています。

こういったバイトテロによって、企業には、使用者責任、レピュテーション(評判)の低下、不祥事が検索エンジン上で会社の関連ワードとして残るリスクなどが発生するおそれがあります。

総務省作成の平成29年版情報通信白書によりますと、SNSを利用している割合は、2012年の41.4%から、2016年には71.2%にまで上昇しており、スマートフォンの普及と併せてSNSの利用が社会に定着してきたと分析されています。

これほどまでにSNSが普及した以上、企業としては、SNSの特性を理解し、トラブルに適切に対処する必要があります。

2 SNSの特性及び利用上の注意点

(1)SNSの主な特性として、①簡易性(手軽に投稿できる。それゆえに、熟考することなく軽率に投稿しがち。)、②恒久性(投稿すると、その情報は半永久的に存在し、完全に削除するのは困難。)、③伝播の迅速性(短期間で拡散され、不特定多数に伝播する。)、④編集容易性(投稿内容の一部を切り取られたりして、投稿者の意図しない形で伝播することがある。)、⑤特定可能性(匿名の投稿であっても、過去の投稿等から投稿者が特定され得る。)といったものが挙げられます。

(2)SNSに投稿する際に留意すべき点は、SNSの利用者は大勢おり、様々な価値観や考えを有する者が投稿を見ているという点です。そのため、自分の投稿が意図どおりに伝わらないおそれが、通常のコミュニケーションより高いと考えるべきです。もっといってしまえば、意図的に曲解する悪意のある人すらいます。

したがって、できるだけ揚げ足をとられないよう投稿の趣旨・意図を明確にし、当該投稿によって誰か傷つく人がいないかを考えた上で、投稿する方が無難です。

投稿の趣旨が伝わりづらいと、受け手側が様々な解釈をし得ることになり、批判的な解釈がなされるおそれも増えてしまいます。

実際の例として、ある企業が、8月9日に、「なんでもない日おめでとう。」と投稿したところ、長崎に原爆が落とされた日であり不適切・不謹慎な投稿であるとして、炎上したケースがあります。

この企業がどういった意図で投稿をしたにせよ、軽率といわざるを得ません。投稿に際して理解しておくべき重要なことは、実際の投稿意図がどのようなものであれ、不適切・不謹慎との解釈も成り立ち得るような投稿をしてしまうと、炎上の危険があるということです。

3 SNSをめぐるトラブルの予防策

(1)規程類の整備

ア 万が一従業員がSNSでトラブルを発生させた場合に、懲戒処分等の人事措置をとることができるような懲戒事由を、就業規則に規定しておく必要があります。

もっとも、SNSはどんどん新しいものが誕生していますので、その時のSNSに特化した具体的な懲戒事由を設けてしまうと、修正が追いついていない場合に適用ができず、かえって懲戒処分ができないおそれがあります。

したがって、就業規則の懲戒事由は、SNSに特化したものを敢えて規定する必要はなく、一般的な懲戒事由がきちんと規定されていれば十分です。

イ ガイドラインを作成し、従業員に対してSNSの利用上の注意点を説明することも、予防策として有用です。ガイドラインなどで注意喚起をきちんとしておかないと、いざ問題が発生したときに、厳正に対処することが困難になってしまうおそれがあります。

ウ 巷では、予防策として罰金制度を設けているところもあると聞きます。

例えば、「スマホを仕事場に持ち込むことは禁止する。これに違反したら1回につき1万円の罰金をとって給料から天引きする。」というような罰金制度です。

しかし、このような罰金制度は、労基法16条に違反するものとして違法ですので、ご注意ください(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。)。

(2)従業員教育

SNSのトラブルは、不特定多数に即時に拡散してしまうなどのSNSの特性を軽視していたり、どういった投稿が問題になるのかの理解が足りないために、発生することが多いです。

したがって、予防策として、研修等の従業員教育を行うことは重要です。

なお、従業員教育においては、SNSトラブルによって会社に生じるリスクばかり説明すると、従業員は他人事のように聞いてしまうおそれがあるので、SNSトラブルによって投稿者自身にどのような不利益が生じるのか、という観点からも説明することが重要です。

例えば、平成28年4月14日の熊本地震の際、ある会社員が、「おいふざけんな、地震のせいでうちの近くの動物園からライオン放たれたんだが 熊本」と、交差点にライオンが歩いている画像を付して投稿したところ、この会社員は、偽計業務妨害罪の疑いで逮捕されてしまいました。

おそらく、この会社員は、それほど悪気はなく冗談のつもりでこのような投稿をしたのでしょうが、冗談で済まないことがあるのがSNSの怖いところです。

(3)誓約書の締結

従業員の意識を高めるために、SNSの利用に関する誓約書を作成し、署名してもらうことも、予防策の1つとして有用です。誓約書は、1度作成したら終わりとするのではなく、研修をした都度など、定期的に締結した方が注意喚起の点から好ましいです。

4 SNSをめぐるトラブルが発生した場合の事後対応

(1)はじめに

どんなに事前予防策を講じていても、SNS上のトラブルをゼロにすることは困難です。

したがって、企業としては、予防策を講じるとともに、SNS上の問題が発生した場合に備えた体制を整えておき、万が一SNS上の問題が発生してしまった場合は、迅速かつ適切に対応して、できるかぎり被害を最小限にすることが重要です。

事後対応の概略は、以下のとおりです。

(2)SNSの投稿削除

問題となった投稿を放置すると、更に拡散していくおそれがあるので、速やかに削除する必要があります。

(3)プレスリリース

場合によっては、プレスリリースを行い、発生した問題についての企業の見解や謝罪等を公表することも検討の余地があります。

もっとも、プレスリリースによって、かえって火に油を注ぐことになってしまい、炎上が拡大するケースもあるので、プレスリリースを行うか否かは慎重に検討する必要があります。

(4)問題を起こした従業員への対応

問題を起こした従業員に対し、事案に応じて、注意指導で済ませるか、懲戒処分を行うかを検討する必要があります。

(5)再発防止策の策定

今後同様のトラブルが生じないようにするため、従業員教育の徹底などの再発防止策を実施する必要があります。

5 さいごに

本稿では、SNSをめぐるトラブルという、SNSの負の側面について述べましたが、他方で、SNSは、今後の企業PRの主流になると思われ、有効に利用していく必要性があります。

SNSは、口コミと親和性が高く、拡散しやすいです。その拡散が悪く作用した場合が「炎上」と呼ばれ、良く作用した場合は「バズった」と呼ばれます。

企業がSNSを上手に利用して、商品やサービスをPRしてバズった場合は、費用をそれほどかけていないにもかかわらず、広告やCMなどを利用して莫大な広告費をかけた場合と同じかそれ以上の宣伝効果を得ることができます。

もっとも、企業が公式アカウントで発信する場合は、従業員の個人アカウント以上に慎重に投稿を吟味する必要があります。

以上